抗生物質が効かない病気と市販されない理由

医師から処方される抗生物質は万能薬のように思われがちです。
しかしその効き目は限定的であり、風邪やインフルエンザのウイルスには効かないのです。
またドラッグストア等で販売されない理由をヒカル先生が推測します。

 

 ウイルスを退治するのは

2020年はヒカル先生の周りはもちろん、どこもかしこも新型コロナウイルスの話題で持ち切りです。

今年は体調不良に陥ってしまえば、「まさか新型コロナウイルスに感染か・・・」と心配になってしまいますよね。

しかしながら今年の冬は、誰もが新型コロナウイルス対策をバッチリ行ったために、インフルエンザにかかる人は少なかったみたいですね。

ちなみにインフルエンザはウイルスがもたらす感染症ですが、特効薬が開発されています。

その特効薬でよく耳にするのは「タミフル」や「リレンザ」、最近ではどこかの悪玉のような名前の「ゾフルーザ」も出てきました。

これらの薬を早期に服用することで、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることができます。

 

ちなみにウイルス性の病気の場合、インフルエンザのように特効薬があるのは稀なんですよ。

 

例えば食中毒を引き起こすノロウイルスに効く薬はありませんし、実は風邪のウイルスに効く薬も存在しません。

風邪薬は、風邪に一般的な症状、咳や鼻水、ノドの痛みなどの症状を抑える薬であって、ウイルスを退治するのは私達に備わる防衛システムである免疫です。

免疫とは、血液の中を流れる白血球達が病原菌のウイルスや細菌をやっつける働きです。

そして免疫は血行促進で強化しますから、ヒカル先生は口酸っぱく血行改善が大事なんて言っている訳ですね。

 

なお、風邪やインフルエンザにかかると医師から「抗生物質」が処方される場合があります。

この抗生物質は「万能薬」のように思われがちですが、実はウイルスには全く効かないのです。

そこで今回ヒカル先生は、抗生物質に関する正しい知識を持ってもらえるよう、丁寧に説明していきます。

 

ウイルスと細菌との違い

感染症とは、病原体が体内に侵入して増殖することで発症する病気のことですが、病原体となるのは主にウイルスと細菌です。

 

抗生物質がなぜウイルスに効果がないのかを理解するには、ウイルスと細菌の違いを知ることが大切です。

 

ウイルスは原始的で単純な構造であり、生命の最小単位とも言える細胞を持っていません。

そのためヒカル先生は、「ウイルスは生物ではない」なんて思っていますが、細胞を持たないウイルスには増殖する能力はありません。

ですが、ウイルスは細胞を乗っ取ることができ、細胞の力で自身のコピーを増やすことができます。

インフルエンザやノロウイルス以外の代表的なウイルスと言えば、旧型のコロナウイルス、アデノウイルス、HIVなどです。

 

一方の細菌はウイルスと違い、細胞やDNAを持つれっきとした生物であり、栄養素を摂取して増殖することが可能です。

代表的な病原体となる細菌としては、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、破傷風菌などがあります。

 

 

抗生物質とは

抗生物質とは細菌をやっつけることに特化した薬のことです。

細菌には多くの種類がありますから、それぞれの細菌に対応すべく抗生物質も多くの種類があります。

 

例えば、世界で最初に作られ最も有名な抗生物質と言えば、ノーベル生理学・医学賞を受賞したアレクサンダー・フレミングが発見した「ペニシリン」です。

フレミング先生は青カビから偶然的にペニシリンを発見しましたが、「医学の歴史上、もっとも重要な発見のひとつ」とも言われています。

なにしろ100種類以上もの細菌に対し効果を発揮し、第二次世界大戦では多くの戦傷兵を感染症から救いました。

ペニシリンは現在でも度々改良が加えられ、肺炎、咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、敗血症、梅毒など多くの病気に適応します。

 

しかし、そんなペニシリンにも効かない細菌があります。

そのひとつが「結核菌」、かつては不治の病と恐れられた「結核」の病原体です。

ですがワックスマン先生によって「ストレプトマイシン」という抗生物質が発見されましたので、結核も収束することができました。

ちなみにワックスマン先生の抗生物質の発見もノーベル生理学・医学賞を受賞するほどの偉業ですよ。

 

抗生物質が細菌をやっつける基本的な仕組みは、細菌の外殻とも言える細胞壁の破壊です。

 

しかし!

前章のイラスト「ウイルスのイメージ」をご覧ください。ウイルスには細胞膜がないではありませんか!

これでは抗生物質を服用しても、ウイルスをやっつけることは出来ません。

なお、インフルエンザウイルスの特効薬は、抗生物質ではなく抗ウイルス剤に分類される薬ですからね。

 

ちなみに医師が抗生物質を処方する理由としてはいくつか考えられますが、ひとつはウイルス感染症で弱った身体を細菌の感染から守るためです。

それに加え、「抗生物質を処方しないと患者からダメな先生だと言われる」なんてことをヒカル先生は聞いたことがありますよ。

 

抗生物質が市販されない理由

政府は、花粉症や風邪などの薬であればドラッグストアでの購入を勧めています。

となれば抗生物質だって売っていても良いのでは、なんと思われる方もいらっしゃるでしょう。

しかしながら、どこのドラッグストアに行っても抗生物質は市販されていないはずです。

※軟膏などの外用薬に抗生物質が含まれている物はあります。

これは抗生物質には多くの種類がありますから、医師の判断の元で有効な抗生物質を選択する必要があるからです。

 

そしてヒカル先生が考える最大の理由としては「薬剤耐性菌」です。

「抗生物質の歴史は、耐性菌との戦いの歴史」とも言われますが、細菌だって生き延びるために必死です。

そんな細菌の中には、抗生物質を投与されても生き残るものがあります。

この細菌は抗生物質に耐性を持っていることから「耐性菌」と呼びますが、抗生物質を長く服用するほど耐性菌が誕生する可能性が高いのです。

 

そして、耐性菌は抗生物質が効かないだけではなく、新たな病気を生み出す危険をはらんでいます。

 

もしドラッグストアで抗生物質が市販された場合、乱用される可能性は否定できず、薬剤耐性菌のリスクは格段に高くなります。

よって、今後政府がドラッグストアでの薬購入政策を押し進めたとしても、抗生物質が市販されることはないでしょう。

 

ちなみに結核は昔の病気と思われがちですが、近年になって増加傾向にあります。

この結核の復活も、抗生物質が効かない結核菌が出現したことが大きな原因です。

 

まとめ

いかがでしたか。

今回は抗生物質の話でしたので、いつもよりも専門用語が多く難しい話になってしたね。

でも抗生物質は身近な薬のひとつですから、正しい知識のもとで安全に服用してもらいたいとの思いで、ヒカル先生は今回のコラムをお送りしました。

 

それでは今回の最後に、実際に抗生物質を処方された場合の注意点を説明します。

同じ種類の細菌でも、抗生物質1回の投与で退治できる細菌もあれば、複数回の投与で倒せる強耐性の細菌もあります。

 

お医者様はこの強耐性の細菌を見込んで、根絶するために必要な量の抗生物質を処方しています。

そのためお医者さんや薬剤師さんは、「処方された抗生物質は飲み切ってください」とおっしゃるのです。

 

でも、もう治ったと自己判断して服用を辞めてしまったら、どうなるでしょうか。

生き残った細菌がいても免疫細胞がやっつけてくれれば御の字ですが、感染症が再発する場合もあるでしょう。

再発したということは生き残った細菌が増殖した結果ですが、生き残った細菌は抗生物質の投与を生き抜いた強者です。

つまり強耐性の細菌ですから、ちょっとやそっとでは退治は難しく、再び処方された抗生物質を飲み切ってもまだ生き残る輩がいるかも知れません。

そしてそんな輩が薬剤耐性菌となっていくのです。

 

なお、処方された薬を全部飲まない人のタイプは、ヒカル先生のように健康に自信がある人が多いかも知れませんね。

 

でも健康に自信があっても正しい知識がないと、思わぬ危険を招くことがあります。

なにしろ薬をひっくり返すと「リ・ス・ク」です。お医者様の指導の元での正しい薬の服用を心掛けてください。