なぜか汗が出なくなった

6月も後半となると、もう夏が来たといっても良いくらいの暑さですね。
いや~この時期は身体が暑さになれていないこともあり、真夏よりも暑く感じてしまいます。
しかもまだまだ梅雨ですからムシムシと湿気がいっぱい。
外に出ると嫌~な空気に包まれ、汗が自然とふき出してしまいます。
汗を放っておくと嫌な臭いの原因になりますから、周りの女性からはスメハラと言われないよう、いつもよりも気を使っている男性も多いことでしょう。
でも、汗は体温が過剰に上昇しないように、身体が熱を冷まそうとする生理現象です。
これはこれで仕方がない部分もありますので、臭いに敏感な女性の皆さんには多めにみてほしいと、ヒカル先生は心よりお願い申し上げます。<(_ _)>
それでは、そろそろ本題に入りましょう。
汗っかきの方からすればウラヤマシイ話に聞こえるでしょうが、こんな暑い時期、水分を摂っても汗をかかない人が増えてきているそうです。
これはエアコンの効いた涼しい部屋にいるから、というトンチ話ではありませんよ。
暑さで発汗するはずなのに、なぜか汗が出ない。
実はこれ、とてもやっかいな状態なのです。
特に昨年までは普通に汗が出ていたのに、今年はなぜか汗が出ないという方は要注意です。
なぜなら、この汗が出ないという症状を発端に、次々と身体の不調が現われてくる可能性が高いからです。
「えっ!」 と驚かれたのはご婦人の方ですね。
実は汗が出ないという症状は男性よりも女性、とくに40歳以上の女性に多くみられる症状なのです。
10個のチェック項目

汗が出ないという方は、下記の10個の症状に思い当たるものはあるか、下記の一覧でチェックしてみましょう。
1.気温が高くても、なぜか寒い
2.しゃがれ声になった
3.気分が落ち込むことが多くやる気が出ない
4.足だけではなく全身にむくみが出てきた
5.食欲が落ちているのに体重は増える
6.急に白髪もしくは抜け毛が増えた
7.首の周り、とくにのどの当たりが腫れている
8.昼間から眠く身体が重くてだるい
9.皮膚がカサカサと乾燥して青白い
10.便秘がちである
どうですか? 10個の症状で該当するものはいくつかありましたか。
・・・うん?
「これって、ひょっとして更年期障害のチェック?」という声が聞こえたような・・・。
さすがヒカル先生のコラムの読者は鋭い方が多いです。
確かにこれらの症状は、40代以上の女性に多い更年期障害でも起こります。
他にもうつ病や認知症、糖尿病、内臓の疾患などが原因となって、このような症状が起こることがあります。
ですが今回ヒカル先生は、お医者様でも見落としやすい「ある病気」の可能性を探るためにチェックをしてもらったのです。
10個の症状のうち、ひとつでも数ヶ月間続いている場合、もしかしたら「甲状腺機能が低下」しているかも知れません。
甲状腺の機能低下と橋本病

甲状腺はのどぼとけの近くにある臓器ですが、ハッキリ言って地味な存在です。
皆さんも甲状腺という名前は知っていても、一体どんな働きをしているのかよく分からないって方も多いでしょう。
でもこの甲状腺は、縁の下の力持ちという言葉がしっくりくるほど、とても大切な働きを担っています。
一言でいうと、「元気の源」です。
甲状腺は身体を元気にする甲状腺ホルモンを分泌し、基礎代謝や心拍数をあげるなど、生命を維持する働きをしています。
この生命維持の働きのひとつが汗の調節です。
こんな甲状腺ですが、なんらかの原因によって甲状腺ホルモンの量が少なくなると、全身に不調が現われてきます。
これが「甲状腺機能低下症」という病気です。
「甲状腺機能低下症」には「橋本病」という代表的な病気があります。
ちなみにこの病名は、発見者である日本人医学者、故 橋本策(はしもとはかる)先生の名前から名付けられました。
人の名前がついた病気は200種類くらいありますが、橋本病のように日本人の名前がついた病気はわずか4つしかありません。
そのくらいこの橋本策先生ってすごいお医者様なのです。
橋本病は自己免疫疾患といって、自分自身の免疫がなぜか甲状腺を異物として認識してしまい、甲状腺組織が破壊される病気です。
橋本病の進行はゆっくりですが、放っておけば症状は次第に悪化していきます。
しかし、橋本先生及び後を引き継いだお医者様のたゆまぬ努力によって、現在ではしっかりとした治療方法が確立していますので、ここはご安心を。
一度破壊された甲状腺は治すことはできないのですが、甲状腺ホルモン剤を服用することで、ホルモンバランスを取ることができます。
しかも、薬を服用する量さえ適正ならば副作用はありません。
ですが、本当の問題はここからです。
甲状腺が低下したことで現れる症状は、更年期障害でもよくみられる症状ですから、まさか甲状腺の異常とはなかなか思いつきません。
普通は内科や婦人科、もしくは皮膚科や精神科などを受診し、お医者様は皆さんの症状を聞いて血液検査や尿検査を始めます。
ですが、40代ともなると身体の不調はあちこちに出てきてもおかしくありませんから、血液検査や尿検査の数値が異常値でも珍しいことではありません。
それで、お医者様は検査数値から疑われる病気を診断し、その治療を開始します。
しかし、肝心の甲状腺治療ではありませんので、治療を受けても身体の不調は以前のままということになってしまうのです。
ですので、このコラムを読んで「もしかしたらこの不調は甲状腺かも」と感じた方は、甲状腺を得意とする病院を一度受診してみてください。
甲状腺ホルモンが多すぎると

甲状腺ホルモンは少ないだけではなく多すぎる場合も、体調不良の原因になります。
なにしろ、甲状腺ホルモンが多すぎると、全身の代謝が必要以上によくなってしまいますからね。
皆さん「あれっ?」と思ったでしょう?
だって代謝が良いなら身体によいはず、甲状腺ホルモンは「元気の源」とヒカル先生が言ったばかりですからね。
ですが、甲状腺ホルモンが多すぎる場合も、「甲状腺機能亢進症」と呼ばれる病気なのです。
異常に暑がりになって汗がいっぱい出たり、つねに脈拍が速く動悸息切れがしたり、精神的にイライラしやすく、疲れやすいといった困った症状が出てしまいます。
さらに困った現象がもうひとつ。
中には眼球が飛び出てしまうこともあるのです。
この理由は現代医学でも判明できていませんが、30%の甲状腺機能亢進症患者の方に現れ、特にタバコを喫われている方に多い傾向があります。
甲状腺機能亢進症の代表的な病気はバセドウ病です。
バセドウ病も橋本病と同じく他の病気に間違われやすいのですが、こちらも治療方法が確立しています。
ひとつは甲状腺ホルモンを抑制する薬の内服。
2つ目は放射性ヨウ素で甲状腺を焼くアイソトープ治療。
3つ目は甲状腺を切除する手術です。
症状が軽い場合は内服薬での治療となりますが、薬にアレルギーがあったり、長期間の内服が難しい場合はアイソトープ治療や手術が検討されます。
どの治療も甲状腺ホルモンを正常な量にする事が目的ですので、甲状腺ホルモン量が正常になれば、以前の健康な生活を取り戻すことができるでしょう。
まとめ

いかがでしたか。
今回ヒカル先生は、この暑い季節になっても汗が出ない方が増えているという情報から、甲状腺機能が低下しているかもと警報を鳴らしました。
甲状腺って地味な臓器ですから、ホルモンの分泌という大切な働きをしているのに注目されることは少ない部位です。
ですが、人体はホメオスタシスという「自律神経」、「内分泌」、「免疫」という3つの働きで健康を維持しています。
そして甲状腺は、このホメオスタシスひとつである「内分泌」に大きく関わる臓器であり、分泌されるホルモンに異常があれば当然体内で異変が生じます。
とくにストレスが多い人、喫煙をしている人、偏った食事をしている人、慢性的な運動不足の人は、ホメオスタシスの機能が弱ってしまう危険があります。
ですから、甲状腺異常を予防する上でも、日頃から良い生活習慣を心掛け、ストレスを溜めないようにしたいものですね。
なお、そんなこと言ったって、簡単に生活習慣は変えられないしストレス発散する時間がないよ!
っておっしゃる方は、以前に紹介した手足の「爪もみ」をやってみましょう。
爪もみは特別な道具も時間も必要なく、お手軽でありながら本格的な治療法です。
こんな簡単な健康法を毎日行うだけで、ホメオスタシス機能が正常になって病気になりにくい体質になりますからね。
「継続は力なり」ですよ。
では、次回もお楽しみに!