てんかんとは発作を繰り返す脳の慢性的な病気です。
日本では100人に1人の割合で発症しており、実はとても身近な病気なのです。
発症する年齢は3歳以下が最も多く、成人になるとその割合は減ります。
しかし、60歳をこえると脳の血管障害などによりてんかん発作を発症する人が増加します。
またてんかんは、通常は治療を継続しているケースがほとんどであり、乳幼児から老年期まで幅広くみられる病気です。
目次
てんかん発作とは? なぜ起こるのか

てんかんとは、脳の神経細胞に突然発生する過剰な興奮により繰り返す発作が特徴です。
脳の神経は、興奮と抑制がバランス良く働いています。
バランス良くとは、通常は神経細胞の興奮作用が強く働きすぎると、抑制側の神経が働きその興奮を抑えます。
しかし、何らかの原因により抑制側の神経の働きが弱まると、興奮した神経を抑えられず、結果激しい過剰興奮が生じます。
それがてんかん発作です。
てんかん発作は、脳が電気的興奮を起こす場所によって症状が様々です。
手足が一定のリズムでガクガクする「間代発作」
手足や身体が反って突っ張った様になる「硬直発作」
全身や手足がピクピクする「ミオクロニー発作」
感覚や感情の起伏や変化、特異な行動などの「複雑部分発作」
など、多彩な症状があります。
また、てんかん発作は患者さんごとに同じ発作が繰り返されることが特徴です。
発作を起こしている最中は脳の電流が乱れているので、脳波を測定すると異常な波が現れます。
この異常な脳波の有無は、実際てんかんの診断に用いられます。
てんかんと発達障害の関係

自閉症スペクトグラム障害やADHD(注意欠陥・多動性障害)などの発達障害に、てんかんとの合併症がよくみられます。
発達障害とは生まれつき脳機能に障害があるために、乳幼児からの発達に何らかの遅れや困難が生じることです。
この発達障害とてんかんには共通の遺伝子変異が見られ、てんかんを発症していない発達障害の人にも脳波に発作性の異常が見られることがあります。
冒頭でも述べた様に、てんかんは神経細胞の興奮と抑制のバランスが傾き、過剰興奮になることによって発作が起こります。
そして発達障害の場合も同様にこのバランスの崩れが認められています。
しかし、てんかんによる神経細胞の興奮と抑制のバランスの崩れが、どのように発達障害につながるのかその原因は明らかになっていません。
てんかんと合併した発達の遅れは、運動面か精神面どちらかの場合、あるいはその両方に確認される場合があります。
また重症度に関わる要因には以下のことが考えられます。
・てんかんの原因となる脳の障害そのもの
・てんかんの発作に起因するもの
・抗てんかん薬による影響、服用の長期化など
・発作のために社会環境や教育の適切な支援が行き届かないこと
現在は適切な薬による発作のコントロールも可能になり、発達障害も相乗して良好な方が多いです。
発達障害の予防から見ると、できるかぎり早期にてんかん発作を抑制することが非常に重要なものと言われています。
ひとつ気をつけることに、てんかんを持った人に発達障害が見られる場合もあれば、全く発達障害のない方もいます。
発達障害の症状が無いにしても、てんかんの持つ方に発達障害が見られる場合を考慮して周りは理解し適切な支援を行うことが大切です。
小児てんかんと合併しやすい他の病気とは?

発達障害だけではなく、他にてんかんと合併しやすい病気があります。
しかし、通常は適切な治療を行うことで新たな合併症を起こすことは少ないと言われています。
小児に関係する合併症が以下の2つです。
<認知機能障害>
認知機能とは、いろいろな情報を取り入れ判断し記憶する機能のことです。
計算や計画を立てる、コミュニケーションをはかる、また文章を理解する、考えるなど様々な事に関係しています。
特に小児期は認知機能の基礎的な部分は急速に発達し、その時期にてんかんが起こる認知機能に影響が出る可能性があると言われています。
生活の上で気になる点があったら情報機関で調べたり、病院に行って早めに対処する事が何よりです。
<重症心身障害>
重症心身障害(重度の身体障害と知的障害を併せ持つ障害)のおよそ30〜60%はてんかんを合併すると言われています。
また、ほぼ寝たきりの障害だとその確率は80%増加します。
てんかんと間違われやすい疾患「けいれん」

けいれんとは、自分の意思とは関係なく筋肉が強く収縮する状態のことをいいます。
てんかんの原因疾患が分かっていないのに対し、けいれんは様々な要因によって引き起こされる症状のひとつです。
代表的なものでお子様が高熱の時におこる「熱性けいれん」、他に感染症や薬物によるものや、頭蓋内が外傷や低酸素脳症によって病変した結果起こるけいれんなどがあります。
これらの要因で起こったけいれんとてんかんの発作は、治療法も異なります。
てんかんは大脳で起こる発作に対し、けいれんは脳が起因のものと、脊髄や末梢神経が興奮することで起こるものがあります。
また、けいれんがおきる原因も様々ですがけいれん発作は一時的なものです。
しかし、てんかんは繰り返しおこるのが特徴です。
「てんかん」は病気、「けいれん」は症状と捉えるとわかりやすいかもしれません。
てんかんの治療とは

<抗てんかん薬>
抗てんかん薬は、医師による診断・指導のもとに服用を行い、使用量を調節しながらその人にとって適切な量にしていきます。
抗てんかん薬は原則的に飲み続けなければいけない薬で、改善が見られた場合はやめることができます。
<ホルモン療法>
脳下垂体から生理的に分泌されるACHT(副腎皮質刺激ホルモン)というホルモンがあります。
このホルモンが副腎に作用して副腎皮質ステロイドホルモンの分泌を促す作用があり、てんかん発作の抑制になることがわかっています。
この働きを治療に用いたものがACTH療法です。
<手術>
てんかんの原因がはっきりしている脳の病変が外科療法で改善出来る場合は手術によって切除します。
<食事>
薬による発作が抑えられない場合、また副作用が強い場合に食事療法で改善を試みます。
ケトン食療法といい、体内にケトン体を増やすために脂肪が多く炭水化物を控える食事を行う方法です。
日本ではあまり普及していませんが治療の難しいてんかんの患者さんに対しての対処療法として利用されています。
てんかん発作の予防策

てんかん発作にはいくつか誘発因子があることがわかっています。
その為の予防策で、発作を起こさない配慮を心がけることが大切です。
<充分な睡眠>
てんかん発作の誘因に過労やストレスがあげられます。
しかし、睡眠不足もてんかん発作を起こす大きな原因のひとつと考えられています。
また、忙しく緊張状態が続いている時は何ともなく、忙しさが一段落しリラックスした時に発作が起きやすくなる人もいるので注意が必要です。
<刺激での誘発を避ける>
「反射てんかん」といもので、発作の引き金となる刺激によっておこります。
その発作の誘因は様々で、強い光や音、読書や計算など人によって異なります。
その誘因が明らかであれば、それを避けることで発作を防ぐことができます。
他に、飲酒をすることで発作が助長されるてんかんがあります(特発性てんかん)。
この場合、お酒は控えることが何よりです。
まとめ

てんかんは年齢や性別関係なく発症するもので、決して他人事の病気ではありません。
多種多様な発作があるので、場合によってはほとんど気づかれない発作もあります。
例えばぼんやりした意識障害が伴うてんかん発作もあり、本人も気がつかないこともあるので周りの人が分かったら伝えることも必要です。
てんかんとは、発作が起きる事もふまえて周りのサポートがとても重要な病気です。
また、てんかんの不安がある人はささいな事でも医療機関で診てもらうことが大切です。
適切な治療を受けて改善が見られた場合は治療をやめる事も可能です。