敗血症。。。あまり耳にすることがない病名ですね。
健康な人であれば敗血症にならず軽い感染症で済むのですが、
もし重症化してしまうと敗血症に進行してしまうかも知れません。
この記事では、敗血症の症状と原因を説明します。
敗血症とは
「敗血症」
この文字をよく見てください。
「血が負ける」です。
血が負けるとは、血液中に入った細菌やウイルスによって血液が本来の働きを出来ないことです。
つまり、
細菌やウイルスによって免疫力が負けてしまい血液の機能が低下することで病気が発症してしまいます。
以前は「菌血症」と考えられていたのですが、1990年以降は「全身性炎症症候群」を伴う感染症と捉えられるようになりました。
敗血症を発症した時点で重篤な状態と診断され迅速な対応が重要となります。
全身の組織・臓器に障害をきたすため、集中治療室での全身管理と集中治療が必要になってしまうのです。
今回の記事では敗血症について詳しく説明していきますが、その前にまずは血液の働きから確認しましょう。
<血液の働き>
赤血球 : 酸素や栄養を全身に送る。
白血球 : 細菌やウイルスと闘う。
血小板 : 止血する。
血液には細菌の増殖を阻止する力があります。
健康な人では血液中に細菌が増殖する事はありませんが、血液の作用がきちんと働かず抵抗力が弱まっていると細菌の増殖が起こり病気に感染してしまう可能性が格段と上昇します。
敗血症の原因

細菌やウイルスによって免疫力が負けてしまい血液の機能が低下することで病気が発症します。
そのウイルスや細菌にはどんなものがあるのでしょうか?
どんな時に血液の機能が低下するのでしょうか?
〈血液の機能が低下する時〉
◆体力が低下している場合
◆白血球が減少している場合
◆内臓の感染症に罹っている場合
などが挙げられます。
このような症状に罹っている時、血液の機能は低下してしまします。
原因となる疾患やウイルス、細菌には以下のようなものが挙げられます。
〈原因となる疾患〉
膿瘍の切開、抜歯、副鼻腔炎、肺疾患、
皮膚疾患、扁桃炎、中耳炎、虫垂炎、腎盂腎炎、
など多数の感染性炎症があります。
これらの疾患のいずれか、もしくは複数経験された方も多いと思います。
しかし、これらの疾患で体力や免疫力の働きが弱まっているとき、運悪く敗血症を発症してしまうことがあるのです。
〈原因となるウイルス、細菌〉
ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎双球菌、
大腸菌などのグラム陽性菌、
近年はプロテウス菌やクレブシエラ大腸菌などのグラム陰性菌、真菌、
病院内では人工関節、人工心臓弁、尿管カテーテル手術の際にも感染の危険があります。
敗血症に罹りやすい人や状況もあります。
<敗血症にかかりやすい人>
高齢者、妊婦、未熟児、手術後間もない人、
がん、白血病、糖尿病、肝硬変、
脳卒中で衰弱している人、
放射線治療、副腎皮質ホルモン薬、
免疫抑制薬を長期に服用している人
年々体力が低下していくお年寄りの方、免疫力が低い乳幼児、闘病中の方は敗血症が起こりやすいのでご注意ください。
敗血症は身近な病気から進行する全身感染症です。
血液中に病原体が入り込み、あっという間に全身へ細菌が回ります。
原発単がどこにあるか明らかでない事が多い為、初期段階では識別が困難かもしれません。
これが敗血症のやっかいなところでもあります。
敗血症の症状

<敗血症を発症のメカニズム>
1、感染症への罹患をきっかけに、心臓や肺、腎臓などの臓器の機能不全が現れる。
2、血液が感染したことで臓器内に細菌が増殖し、血中に絶えず細菌が送り出されることになり全身が感染してしまう。
3、特定の細菌が作り出す毒素のために、炎症の時に分泌されるホルモンの「サイトカイン」が血液中に流れ込み、血中濃度が高くなる。
「サイトカイン」によって血管が拡張し血圧が低下、臓器内部の毛細血管の血液が凝固してしまう。
「全身性炎症症候群」を引き起こす重篤な疾患。
となります。
<敗血症の主な症状>
・異常な体温の上昇または体温低下、悪寒戦慄や脱力。
・冷たく湿潤した皮膚。
・心拍と呼吸が速くなり錯乱をきたし血圧が低下。
・白血球の異常な増加または減少。
・臓器の機能不全や体内の一部に対する血液不足。
などが挙げられます。
もし気になることがあれば医者に相談をしましょう。
<敗血症の罹患・死亡者数>
敗血症は世界で年間発症者は約2000万人~3000万人です。
そのうち約1000万人が死亡しています。
この死亡数はエイズや前立腺がん・乳がん患者を合わせた死亡数より多いのです。
また、肺炎やガンなどから敗血症を発症してしまう人も多く、年間約10万人がこのような経緯で死亡していると言われています。
先進国でも死亡率が全体の3割、敗血症ショック状態になる人はおよそ5割という統計があります。
また、腹腔内疾患の方は特に死亡率が高くなる傾向にあります。
運よく命を取り留められても、何年にもわたる後期合併症に苦しむことになってしまうのです。
特に発展途上国では現在でも不衛生な環境や栄養不足という問題があり、10万人以上の女性が妊娠と出産の過程で敗血症を患ってしまうともいわれています。
<敗血症で亡くなった著名人>
2016年 ボクシング・ヘビー級 元世界王者 モハメド・アリ
2017年 西武ライオンズ 森 慎二コーチ
特に注意すべき細菌 “溶連菌”

敗血症診療ガイドラインにより敗血症患者の生存率は向上したものの、発症者数は1992年から激増しています。
敗血症以外の感染症関連の疾患よりも高い死亡率と罹患率であり、過去10年で敗血症の診断は3倍となっています。
これは心筋梗塞の診断数を超えるほどになるのです。
特に注意すべき細菌としては「溶血性連鎖球菌」という自然界に広く存在する細胞核を持たない微生物があります。
これは「溶連菌」と略されることが多いのですが、小さなお子様に多く見られる感染症です。
子育ての経験がある人はご存知の方も多いかも知れませんね。
この溶連菌から「劇症型溶連菌感染症」という怖い病気に進行してしまう可能性があるのです。
なぜ、どのような場合に進行してしまうのか、その原因は今のところ明らかになっていません。
劇症化した場合は発症後数時間から24時間以内に急速に悪化して、敗血性ショックを起こします。
「人食いバクテリア」ともいわれている状態になります。
細胞が壊死するスピードがあまりにも早く、致死率は30%~70%にも及びます。
早期治療がとても難しく一度発症してしまうと死に至る事が多い病気です。
ちなみに、2017年に亡くなった森慎二コーチは、毒性の強い溶連菌の感染による敗血症で亡くなったと言われています。
大人の方は溶連菌に感染したとしても、子供のころに溶連菌に感染して保菌者となっていることも多く、病気に進行することは少ないと言われているのですが、溶連菌はお子様だけではなく大人も感染しますので、注意が必要です。
さいごに

敗血症は過小評価されている健康リスクの1つであり、日本でも最近になってやっとメディアに取り上げられるようになりました。
敗血症の予防はワクチン接種、衛生基準、早期診断、最適治療といった順守改善が基本です。
これまであまり取り上げられる事が無かった敗血症ですので、まだまだ敗血症に対する認識・取り組みが遅れています。
ですが、小さなお子様が溶連菌に掛かってしまったことで、ご家族の方が感染症で敗血症に至ってしまうこともあります。
国・お医者様任せではなく、ご家庭から健康管理を始めていきましょう。
敗血症の治療、予防方法についてはこちらの記事で紹介しています。
>>免疫力の低下で発症する敗血症…治療法と日常で行える予防とは?