肝臓の働きとガンに至るまで

「磁気とカラダの保健室」の新シリーズとして、
第一弾>>肝臓の働きとガンに至るまで
第二弾>>肺ガンとタバコ、肺の働きとは?
をテーマに臓器の働きとガンについてお送りいたしましたが、お陰様でヒカル先生の廻りの評価は上々でした。
やっぱり「ガン」という病気は皆さん特別なようで、とくにご両親をガンで亡くされている方にとっては「もう少し早くガンに気付いていれば」という気持ちが強くあるようです。
現代の医学は素晴らしく、たとえガンであっても早期に発見できれば完治できる病気です。
ですので、ヒカル先生のコラムは専門用語をなるべく使わずに、初歩的な健康情報や身近な例を取り上げて説明していきますから、皆さんの健康入門書として健康知識や病気予防に役立てもらえると、ヒカル先生はとってもうれしいです。
今回のテーマですが、やっぱりこれを早めに扱わない訳にはいかないでしょう。
「人体の化学工場」と呼ばれ、「肝心(腎)かなめ」という言葉があるほど、私達の身体の中でも特に重要な臓器である「肝臓」です。
まずは肝臓の働きから、そして肝臓ガンに至るまで、どのように病気が進行していくかをわかりやすく解説していきます。
特にお酒を飲まれる方は、必見の情報が満載でお送りしますので、楽しみに読み進めてくださいね。
肝臓は腹部の中心からやや右側にある、人体の中で最も重い臓器です。
その重さは1~1.5キログラムもあり、成人60キログラムの体重の方であれば、約2%を占める大きな臓器です。
そんな肝臓ですが、肝臓の働きと言ったら皆さん何を思い浮かべますか?
まっさきに思い浮かぶことは、やっぱりお酒に含まれるアルコールの分解・解毒作用ですよね。
しかも「人体の化学工場」である肝臓は、アルコールの分解・解毒作用以外にも、主な働きが下記の3つもある、すごい臓器なのです。
〈栄養素の貯蔵と加工〉
3大栄養素のひとつである脂肪からコレステロールやリン脂質が作り、血液によって全身に運ばれます。
ですが、その栄養素はいざという時の為に貯めておかなくてはなりません。
それが中性脂肪やグリコーゲンです。
これらは肝臓に貯蔵されて、なんらかの原因で体内のエネルギーが不足したときに、タンパク質、脂肪、ブドウ糖に戻して血液に放出されます。
いわば、緊急バッテリーという役目も担っています。
〈胆汁を作る〉
胆汁は脂肪を消化するために必要な液体ですが、古くなった赤血球を材料にして、1日に0.5~1リットルも作られます。
作られた胆汁は肝臓の一部分である胆のうに蓄えられて、十二指腸に送られます。
〈赤血球の分解〉
赤血球に含まれるヘモグロビンを分解して鉄を作り出します。
特に女性は生理がありますので鉄分が不足しやすいのですが、人体に必要な鉄の70%は肝臓で作られます。
また、胆汁を作るもとになるビリルビンも作ります。
このように肝臓は、体内に入ってきた物質を分解、加工、貯蔵するという働きがありますので、「人体の化学工場」と比喩されるのです。
沈黙の臓器

大きな臓器で色々な働きをしている肝臓ですが、「沈黙の臓器」とも呼ばれることがあります。
その理由は、肝臓は心臓や胃、腸のように動くことはなく、病気が相当進行しないとこれと言った症状が出ないからです。
また、肝臓はとても丈夫な臓器であり、病気で肝臓の80%以上が壊れてしまったり、切除しても残りの部分が頑張って働き続けることが可能です。
しかも、とても生命力が強い臓器です。
例え手術などの治療を行って肝臓の一部を切り取ったとしても再生するのです。
このようにとても強い肝臓ですので、病気の症状が出たとしても初期のうちはなんとなく身体がだるい、疲れやすい、吐き気がするといった感じしかありません。
それで、「まだ大丈夫、俺の肝臓は強い!」と思ってしまうのですが、やっぱり無理はいつまでも続けることはできません。
自覚症状が現われたときは、かなり病気が進行していることが多く、注意が必要です。
肝臓の病気

肝臓ガンになってしまう原因は、実はあきらかになっています。
それは肝炎ウイルスの感染、肝硬変からの進行、他の部位からのガン転移です。
肝炎ウイルスは日常の生活から感染することはありませんので、過剰に気にする必要はありません。
ですが、カミソリや歯ブラシを共有すると血液感染の危険性がありますので止めておきましょう。
しかし、ウイルスによる感染は致し方ない運の要素もあり、予防で完全に防ぐことは難しいかもしれません。
もうひとつの経路は肝硬変から肝臓ガンの進行ですが、こちらは生活習慣による影響が大きいですので食い止めたいものです。
それでは、生活習慣の乱れから進行する肝臓病をクローズアップして説明をしましょう。
肝臓ガンの一歩前に状態である肝硬変ですが、肝硬変の前段階は「脂肪肝」と「アルコール性肝障害」です。
脂肪肝とは、高カロリーの料理の食べ過ぎやお酒の飲みすぎにより肝臓に異常に脂肪が溜まってしまう状態です。
もともと肝臓には栄養素の貯蔵という役割がありますので、2~4%の脂肪は含まれています。
ですが、30%を超えると脂肪肝と診断されてしまいます。
アルコール性肝障害とは、大量のお酒を飲んでしまう方に多い病気です。
お酒を「飲める人・飲めない人」という体質は遺伝子で決まりますが、飲める人は肝臓のアルコール処理能力が高い、飲めない人はアルコール処理能力が低いというわけではありません。
肝臓の処理能力は決まっていて、例えば男性が日本酒1合(アルコール22グラム位)を飲むと、肝臓は2~3時間かけてアルコールの解毒作用をします。
当然、肝臓がアルコールの処理に頑張っているときは、他の仕事がおろそかになってしまいます。
二つの事を同時にできないヒカル先生と同じです。
そうすると、どんどん仕事が溜まっていくように、脂肪もどんどん肝臓に溜まってしまうのです。
そうして、脂肪肝、アルコール性肝障害が進行していくと、肝臓の細胞が破壊され、肝硬変に進行してしまいます。
ちなみに、肝硬変とは「肝臓が硬く変化する」と書きますが、文字通り肝臓が繊維化して硬くなってしまい、肝臓自体も委縮して小さくなってしまいます。
ここまで肝臓が悪くなってしまうと、さすがの沈黙の臓器も沈黙できなくなってしまいます。
全身のだるさや食欲低下から始まり、お腹に水が異常に溜まる腹水、男性の乳房が女性のように大きくなってしまう女性化乳房といった、外観に現れる変化も出てきてしまいます。
そして肝臓の血流が悪くなり、食道や胃の静脈がこぶ状にふくらむ「静脈りゅう」ができてしまいます。
もしこの静脈りゅうが破裂してしまったら大出血で命に関わります。
そしてついに肝臓ガンへの進行です。
ガン細胞は細胞分裂の過程で生まれた異型細胞ですが、血流の悪いところは栄養素や酸素が十分に細胞に届かないために異型細胞ができやすく、やがてガンになってしまうのです。

ちなみに、肝臓ガンとは肝臓に発生した癌の総称であり、肝臓から発する「原発性肝臓ガン」と、転移してきた「転移性肝臓ガン」に分けられます。
また、原発性の肝臓ガンはさらに2種類に分かれ、肝細胞から発生する「肝細胞ガン」と、胆汁の通り道である胆管の細胞から発生する「胆管細胞ガン」があります。
ですが、約90%は肝細胞ガンですので、一般的に肝臓ガンといえば「肝細胞ガン」のことを指します。
まとめ

いかがでしたか。
今回は肝臓をテーマに、まずは肝臓の働きを理解してもらったうえで肝臓がんに至るまでの病気の進行を解説しました。
このように説明すると、なぜお酒を飲まない「休肝日」を作りましょうという意味も理解できますよね。
そう、お酒の飲みすぎは、肝硬変の前段階である脂肪肝、アルコール性肝障害の両方の原因になり肝臓に大きな負担がかかるからです。
肝臓がんは、薬剤性の肝炎や自己免疫性の肝炎が原因である場合は予防が難しいです。
しかし、脂肪肝、アルコール性肝障害からの肝硬変ならば、日頃の生活習慣に気を付けていけば、十分に予防することができます。
そして肝臓はとっても強い臓器です。
ラットの実験ですが3分の2を切り取られた肝臓が1週間ほどで元の大きさに戻っていた、というほどの強い臓器です。
ですので、健康診断等で肝機能の数値が悪かったとしても、生活習慣を見直していけば十分回復できるはずです。
そして、癌細胞ができてもすぐにガンが発症するわけではありません。
血行が改善され免疫力が強くなれば、私達の身体は癌細胞さえもやっつけてしまう働きがあるのです。
人体って本当にすごいんですよ。