中高年の間で「血管炎」を患う人が増えている

中高年の間で「血管炎」に罹る人が増えていると言われています。数年前からわかってきた病気で、医師にも十分知られていなく、見過ごして重症化する懸念もあります。ですので知識の普及が大切と言われています。
血管炎には、どの動脈が炎症しているかにより病気に種類があり、
総称で「血管炎症候群」と呼ばれます。
血管炎症候群とは、全身のさまざまな血管に炎症が起こり、血管の流れに不具合が起こる病気です。
主に大動脈(太い血管)に炎症を起こすものに、
「高安動脈炎」「巨細胞動脈炎(側頭動脈炎)」
主に中動脈に炎症を起こすものに、
「結節性多発動脈炎」
主に小動脈に炎症を起こすものに
「顕微鏡的多発血管炎」「多発血管炎性肉芽腫症(ウェゲナー肉芽腫症)」「好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(チャーグ・ストラウス症候群)」
主に毛細血管、細静脈に炎症を起こすものに
「ヘノッホ・シェーンライン紫斑病」「過敏性血管炎」
などがあります。
いずれも免疫の不具合が関わって起こると考えられていますが、はっきりとした原因は分かっていません。
血管炎を発症する原因は?

通常、血管炎のきっかけは不明です。
ただし、感染症、毒性物質、特定のウイルス(主に肝炎ウイルス)薬が、時に血管炎を誘発することがあります。
血管炎はがんやその他の炎症を起こす病気の結果として生じることもあります。分かってきたのが、免疫システムが誤って自分の血管や血管の一部を異物と認識し、これらを攻撃することで炎症が起こるものと考えられてます。
炎症を起こす免疫系の細胞が、病変血管を取り囲んでその中に入り込み(浸潤)、血管を傷つけます。
傷ついた血管は漏れやすくなったり、狭くなったり、詰まったりすることがあります。そうなると、その傷ついた血管によって血液が供給されていた組織への血流が途絶えます。
血流が途絶えた組織は、永続的な損傷を受けたり、壊死したりすることがあります。
血管炎は、動脈、毛細血管、静脈、またはこれらの複数を侵します。
1つの血管全体が侵される場合も、その一部だけが侵される場合もあります。頭部や皮膚など、体の1つの部分に血液を供給する血管に起こることもあれば、多くの異なる臓器に血液を供給する血管に起こることもあります これを、全身性血管炎と言います。
どの器官系も侵される可能性がありますが、皮膚に生じて他の臓器を侵さないこと場合もあります。
血管炎の症状とは?

症状は、血管への直接的な損傷によって起こる場合と、神経や臓器など、血流が途絶えたり減少したりした、虚血組織への間接的な損傷によって起こる場合があります。
血管炎症候群に共通して起こりやすい症状として発熱、全身倦怠感、体重減少などの全身症状があげられます。
症状は、侵された血管の太さや位置、侵された臓器の損傷の程度によって異なります。
例として、次のような症状が現れることがあります。
● 皮膚 : 出血からくる青紫色の斑点やあざ(紫斑)、じんま疹、小結節、点状の小さな斑点、表層の血管が拡張することによる斑状の変色(網状皮斑)、膝より下の潰瘍
● 末梢神経 : 炎症が起こっている部分の腕や脚のしびれ、チクチクするなどの違和感、または筋力低下
● 脳 : 錯乱、けいれん発作、脳卒中
● 消化管 : 腹痛、下痢、吐き気、嘔吐、血便
● 心臓 : 狭心症、心臓発作
● 腎臓 : 高血圧、むくみ、腎機能障害
● 関節 : 関節の痛みや腫れ
炎症により、発熱、寝汗、疲労、筋肉や関節の痛み、関節の腫れ、食欲不振、体重減少などの全身症状が生じることもあります。
また、高安動脈炎では左右上下の血圧差が出現したり、巨細胞性動脈炎では側頭部の頭痛や視力障害が起こったりします。
より細い血管の不具合では皮膚や内臓の症状が出現し、紫斑、皮疹、神経障害、間質性肺炎、糸球体腎炎等を起こしたりします。
治療法は?どのような経過をたどるのか

治療が行われないと生命に危険がおよぶ病気ですが、出来るだけ早い時期に診断し、病気の初期にしっかりと治療すれば、8割以上の患者さんの血管炎症は治まり、寛解となります。
しかし、治療が遅れたり、治療の反応が良くなかったりすると、寛解導入までに時間がかかり、臓器の機能障害が残ってしまいます。血管炎の症状により、広範な肺胞出血を起こすと、一時的に人工呼吸器を必要とする場合もあります。
腎不全になった場合には血液透析が必要になります。末梢神経炎に伴うしびれや痛みは、しばしば残る事があります。
治療の目標は、副腎皮質ステロイド(ステロイド)や免疫抑制薬を用いて、血管の炎症を完全に消失させて(寛解療法)、その寛解状態を維持することです。
特に、腎臓や肺などの重要臓器に障害がみられる場合には強力な寛解療法が必要で、中等量から高用量のステロイドと免疫抑制薬のの併用が有効だと言われています。
発症年齢が中高年に多く、高齢に伴いさまざまな合併症を伴う場合も多いので身体の状態に合わせて、治療の強さを調節します。
診断後速やかに治療が開始されれば約3~6か月で寛解に至ることが期待できます。
寛解に至った場合は、ステロイドを減量し、副作用の弱いほかの免疫抑制薬に切り替えた免疫維持療法を少なくとも1~2年間は継続します。
このような治療に抵抗性の場合、あるいは、副作用などでこのような治療が難しい場合には、ステロイドと併用して寛解導入を目指す場合もあります。
治療により感染症がおこりやすくなりますので、治療を成功させるためには感染症の予防・早期診断・早期治療が特に大切です。
また、病気は再発する事もあるので、定期的に専門医の診察を受け、きちんとお薬を継続を継続する事も大切です。
まとめ・日常生活で心がけることは

最も大切な事は感染症に対する注意です。
帰宅時には、手洗い・うがいを欠かさずに実行してください。インフルエンザなどのワクチンの接種も可能な限り受けた方が懸命です。
また規則正しい生活と食事は、健康を維持するのに必須です。
ステロイドによる生活習慣病を防ぐためには、体重管理が大切です。また、骨密度も定期的に検査を受ける事が推奨されています。