熱中症になりやすい高齢者とは…?

7月も半ばになると連日のように「真夏日連続●日!」、「最高気温を更新!」なんてニュースを聞く機会が増えてきました。
ヒカル先生は寒さより暑さの方が得意なのですが、ここ最近の暑さは半端ないですね。
この暑さでは工事現場などの外仕事をされている方はとても大変でしょう。
暑さで食欲がなくなると体力も奪われますし、熱中症で倒れることのないよう、体調管理には十分すぎるほど気を付けてもらいたいものです。
うん?
「大丈夫だよ、ヒカル先生。水分はしっかり取っているし、いざとなったらエアコンが効いている部屋に逃げ込むからさ。」という元気な声が聞こえました!
さすがこのサイト「磁気とカラダの保健室」の常連の皆さんは、熱中症対策もバッチリ身についているようですね。
そうです。
熱中症の予防はこまめな水分補給と暑さを避けることが最重要ポイントです。
さらに付け加えると、汗で失われた塩分やミネラル分の補給、体力をつけるための食事と睡眠が熱中症予防のポイントです。
でも、夏が暑いのは今に始まったことではありませんから、熱中症の予防対策をいまさらヒカル先生が説明するまでもありませんよね。
それでも今回、ヒカル先生が熱中症を取り上げたのはある理由があります。
実は熱中症になりやすい年代、熱中症が起こりやすい場所には極端な偏りがあります。
なんと熱中症患者の2人に1人は高齢者、その大半は自宅に居るときに発生しているのです。
もちろん高齢者は身体が弱いという理由があります。
しかしヒカル先生は、「高齢者特有のある傾向」がこの結果をもたらしていると考えています。
そこで今回のコラムでは、「高齢者特有のある傾向」をわかりやすく解説していきますから、高齢者とご一緒に住まわれる方はぜひともご自宅での熱中症対策に役立てください。
高齢者はなぜ熱中症になりやすいのか?

高齢者特有のある傾向を説明する前に、まずは熱中症が起こりやすい自宅環境から考えてみましょう。
熱中症を予防する上でもっとも重要なアイテムは、何といってもエアコンなどの冷房機器です。
さすがに真夏日にエアコンが使えないという環境では、熱中症のリスクが高まってしまうことは否めません。
とくに最近の家は高気密高断熱であり、エアコンを使うことを前提で設計して作られているくらいの必需品です。
しかし、なんらかの理由によりエアコンを設置していないご家庭だってあるでしょう。
ですがエアコンは、1960年代のいざなぎ景気にはカラーテレビ、自動車とともに三種の神器として扱われ、いまや2人以上の世帯には90%以上の普及率です。
そう考えると、「自宅にエアコンが無いがために熱中症になってしまう」というケースはそれほど多くないと推測されます。
これを逆の見方にすると、「エアコンがあるのに熱中症になってしまう」となります。
これが今回の大きなポイントです。
実は若い人と高齢者では温度を感じる感覚が違い、若い人は暑く感じる気温でも高齢者はさほど暑さを感じていないことがあります。
しかし、高齢者は感覚的に暑さを感じていないだけであり、体内の細胞はしっかり暑さを感じています。
その結果、熱中症になるほど暑い日でもエアコンを使わず、そのまま熱中症で倒れてしまうことがあるため注意が必要です。
でも、若い人と高齢者が同居しているなら、若い人がエアコンを付けてあげれば良いのではと思うでしょう?
しかし、高齢者はエアコンの冷たい風で身体が痛くなることもあります。
また涼しい部屋から暑い部屋や廊下に移動すると、温度差で体力を消耗します。
このような理由で高齢者はエアコン嫌いになってゆき、エアコンがあるのに使わない、エアコンが効いている部屋を避けるようになるのです。
熱中症になる危険が高い時間帯は「就寝中」ですが、エアコン嫌いの高齢者は寝るときにエアコンを使いません。
さらに熱中症のリスクを加速させる原因が「就寝中の水分不足」です。
就寝前にお風呂に入る方も多いと思いますが、入浴中や寝ているときは汗で相当な量の水分を失います。
それを防ぐため、寝る直前にはコップ一杯のお水を飲み、枕元にはペットボトルに詰めたお水を置いておくと良いのですが、高齢者は夜中に水分を摂ることを嫌がる傾向があります。
これは一体どんな理由があると思いますか?
最も多い理由としては、「夜中に行くトイレの回数を増やしたくない」という理由があります。
高齢者は夜中に何回もトイレで起きてしまう方は珍しくありません。
高血圧治療のために利尿剤を服用されている方ならばなおさらでしょう。
さらに高齢者はのどの渇きを感じにくいこともあって、ついつい水分補給を控えてしまいがちなのです。
しかし暑い日に水分補給を控えてしまったら、脱水により血液はドロドロの状態となります。
そうすると熱中症ばかりではなく、心筋梗塞や脳卒中といった危険な病気が起こるリスクも高まってしまいます。
高齢者の熱中症対策

いかがでしたか。
高齢者はなぜエアコンがあっても使いたがらないのか、水分を控えてしまうのかという理由をご理解いただけたでしょうか。
これは若い人ですとなかなか理解しがたい理由だと思いますが、高齢者にとっては十分正当性がある理由なのです。
でも、だからと言って「熱中症にならないように祈る」ことしか出来ない訳ではありません。
次に私達ができることとして、高齢者への熱中症対策を考えていきましょう。
適度な室温環境を作れるのならばエアコンは無理に使う必要はありません。
防犯上の問題はありますが、窓を開けて風通しを良くする方法。
エアコンの代わりに扇風機や除湿器を使う方法などで、室内環境を緩和することができるからです。
エアコンからの冷たい空気は重く室内の下方に溜まりますから、扇風機やサーキュレーターで室内の空気をかき混ぜる方法も試してみましょう。
このような方法で室内の温度差が無くなると高齢者の不快感は少なくなりますから、エアコン嫌いが抑制するかも知れません。
夜中の水分補給に関してはなかなか難しい問題です。
なにしろ、ご本人がトイレに何回も行きたくないと大切な水分補給を控えてしまう訳ですから、周りの人が「水を飲んで」と助言してもなかなか聞き入れてくれないでしょう。
このようなケースでは、無理に「水を飲め!」と強く言うのは逆効果ですから、高齢者が楽にトイレに行ける方法を一緒に考えてあげる方が得策です。
例えば、
高齢者の寝室はトイレに近いところにする。
床敷きの布団よりも起き上がりが楽なベッドにする。
トイレ内には手摺を付けて立ち上がりを楽にする。
といった室内環境の工夫です。
この様な工夫をすることで、「夜中にトイレに行きたくなっても楽に行ける」という気持ちになれば、高齢者の水分補給への抵抗はずっと少なくなるはずです。
まとめ

若い人ならばエアコンや水分補給に抵抗もなく体力もありますから、たとえ熱中症にかかったとしても軽症で済んだり快復も早いです。
ですが体力が衰えた高齢者の方は若い人とは違い、ちょっとした油断が大事を招くことがあります。
それで今回のコラムでは、高齢者と一緒に住まわれる方にぜひとも知ってほしい「高齢者特有のある傾向」から、ヒカル先生なりに熱中症対策を考えてみました。
高齢者特有のある傾向とは、エアコンを嫌う、夜中の水分補給を嫌がることです。
これは熱中症対策には正反対の傾向ですが、高齢者の気持ちになって理由を考えてみると正当な理由があります。
ですから高齢者と一緒に暮らす方には、高齢者が無理なく熱中症予防ができる環境を整えてほしいものです。
それでは今回の最後に、人体の熱交感の仕組みにも触れておきましょう。
体内で発生した熱は血液によって皮膚に集められます。
これは皮膚の真下に広がる毛細血管に熱を集め、汗が蒸発するときの気化熱で身体を冷やすためです。
いわばラジエターと同じ原理であり、人体は血液の流れで体温上昇を防いでいるのです。
ヒカル先生は毎度のごとく血液の大切さを皆さんに伝えている理由は、このような血液による熱交換を働かせるという意味もあるのですよ。
それでは、熱帯夜でもぐっすり眠る対策を整えて、元気な明日を迎えましょう。