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セルフメディケーション税制ってなに?
今日は2018年の1月9日。
お正月も明け、そろそろ普段の日常に舞い戻ったころでしょうか。
ヒカル先生もやっとお正月気分が抜けて、新年らしくハツラツとした日々を過ごしています。
でも、やっぱりどこか気が抜けているところもあり、ちょっと気を引き締めなくちゃと思う今日この頃です。
そこで今回のコラムは、いつもよりも固い話題を取り上げることにしました。
皆さん、今回のコラムのタイトルをもう一度ご覧ください。
あまり耳慣れない言葉がありますよね。
「セルフメディケーション税制」です。
今回取り上げるセルフメディケーション税制は2017年の1月1日に始まったばかりの新しい医療費控除制度です。
ほとんどの方は「なんのこっちゃ?」といった感じではないでしょうか。
簡単にいうと、ドラッグスストアや薬局などで薬を購入したお金が戻ってくる制度です。
もう少し詳しく説明すると、対象となる商品の購入費が年間1万2千円を超えた場合に所得控除できる制度であり、確定申告すれば大切なお金が戻ってきます。
最近はあちらこちら、野菜もガソリンといった生活必需品も値上げ。
納税の義務を果たすことも大変な世の中ですが、戻ってくるお金があればとてもうれしいですね。
税制は面倒と思われるかも知れませんが、なるべく簡単な言葉で説明しますから、ぜひともこの機会にセルフメディケーション税制を学び、有意義に使ってしまいましょう!
セルフメディケーション税制を利用する前に

この制度を利用するには、最初に知ってもらいたい大切なことがいくつかあります。
セルフメディケーション税制対象の薬
ドラッグストア等で売っている薬がすべて対象になる訳ではありません。
OTC医薬品と言う医療用から転用された特定成分を含む医薬品が対象になります。
※本マークは、一般社団法人 日本OTC医薬品情報研究会の登録商標です。
具体的には、厚生労働省のホームページに掲載されている医薬品となります。
対象製品の多くにはこのような共通識別マークが入っています。
もし手元にドラッグストア等で買った薬があれば見てみましょう。
セルフメディケーション税制対象の時期
二つ目は、購入した時期です。
セルフメディケーション税制は2017年1月1日から開始されました。
この日以降に買った商品が対象になります。
申告手段は毎年2月中旬から受付が始まる確定申告ですので、2017年に買ったOTC医薬品のセルフメディケーション税制は、今年が最初の受付となりますね。
ちなみに2018年の確定申告期日は2月16日から3月15日ですよ。
セルフメディケーション税制の対象となる人
所得税や住民税を納めていることはもちろんなのですが、ここ1年間に職場の定期健康診断や人間ドックなどを受けている人、という条件があります。
確定申告の時に健康診断の結果などを添付することが必要になります。
健康診断の代わりにメタボ検診(特定健康診査)、予防接種、事業主健診、健康診査、がん検診でも大丈夫です。
最後の注意点は、「従来の医療費の所得控除か、セルフメディケーション税制のどちらかを選択する」ということです。
従来は10万円を超えた医療費の医療費控除を受けることができました。
しかし、この制度とセルフメディケーション税制を同時に使うことはできません。
どちらかお得な方を選んで申告することになります。
もう少し詳しく知りたいセルフメディケーション税制

ちょっとセルフメディケーション税制に興味が出てきたところでしょうか。
ぜひともこの機会にドンドン吸収してくださいね。
でも、「なんか良く分からない、つまらない」と眠くなってしまった方もいらっしゃるかと思います。
今度は少し頭を使った計算をしてみましょう。
OTC医薬品の購入費が年間1万2千円を超えた場合に所得控除できますが、行政制度には「○○円を超えた部分が控除対象」という表現がよく出てきます。
今回のセルフメディケーション税制も同様の計算方法が扱われます。
1万2千円を超えた部分が控除の対象になり、その上限は8万8千円と決まっています。
OTC医薬品10万円分を購入していたとしても、1万2千円を差し引いた残り8万8千円がそのまま返ってくるという訳ではないので注意してください。
では、どのような計算をするのか具体的にみてみましょう。
※実際の減税額は、諸条件によって変動する場合がありますので目安としてお考え下さい。
下の図1をご覧ください。

図1は控除額のイメージですが、注意すべきことがあります。
ひとつは「消費税込み」の金額で計算するということです。
次に、最大控除額は1万2千円を差し引いた額8万8千円と決まっています。
もしOTC医薬品の購入額が10万円を超えてしまっても最大10万円として計算されます。
つまり、OTC医薬品の購入額が12万円だとしても10万円が上限になり、1万2千円を差し引いた金額は8万8千円となるのです。
そして、図2で説明する課税所得金額による所得税率も重要になります。

一般的に収入が多い人ほど多く税金を納めることになりますが、課税所得が4000万円もある方はなんと45%もの所得税率が掛かります。
でも、今回の計算では一般的な例で説明しますので、所得400万円の方で考えましょう。
所得税率は20%です。
この20%がどのように使われるかと言うと、先ほどの図1で説明した控除額に所得税率を掛けた金額が所得税から減税されます。
つまり、8万8千円の控除額であれば20%を掛けた金額である1万7600円が所得税の減税になります。
さらに、減税は所得税だけではありません。
個人住民税も減税になるのです。
個人住民税率は、都民税4%+区市町村民税6%=10%ですね。
8万8千円の控除額であれば、10%を掛けた金額である8,800円が個人住民税の減税です。
よって、所得税1万7600円と個人住民税8,800円の合計である2万6400円が減税となるのです。
どうですか。
これが基本的な計算となるのですが、ご理解いただけましたでしょうか。
丁寧に説明をしようとすると所得税と個人住民税を別々に計算しなくてはなりませんので、このようにややこしい計算・説明になってしまいました。
税金の計算を説明しようとするとけっこう難しいものです。
でも、ここでヒカル先生のワンポイントアドバイスです。
減税額の計算は、所得税率をチェックしておけば所得税、個人住民税を個別に計算する必要はありません。
ご自身の所得税率+10%で計算すると良いのです。
先ほどの例であれば、所得税率20%なので10%を加算した30%とします。
そして、控除額8万8千円に30%を掛ければ26,400円。
このように1回で計算できます
課税所得が1000万円ならば所得税率は33%ですので、10%を加算すると43%。
88,000×43%=37,840円という感じですね。

ちなみに、OTC医薬品の購入は確定申告するご本人が購入した分だけが対象になるわけではありません。
ご本人と扶養する家族が購入した金額を合算できます。
まとめ

現在の医療費は40兆円を超え、国民一人あたりの医療費は約33万円ともいわれています。
セルフメディケーション税制の目的は、軽い不調ならば医療機関を受診することなく市販薬などで自ら手当を行うことで、ご自身のQOL(クオリティ― オブ ライフ = 生活の質)をあげ、国の大きな財政負担となっている医療費を削減しようという試みです。
この制度は2017年の1年間(1月1日~12月31日)に購入したOTC医薬品の購入額を2018年の確定申告にて申告します。
今の内からドラッグストアや薬局等で受け取ったレシートや領収書を整理しておきましょう。
しかし、この制度のことを知らずにレシートや領収書を保管していなかった人は残念ながら本年度のセルフメディケーション税制の申告ができないため、注意が必要です。
そんな人は従来の医療費所得控除をご利用できるのならば、こちらを利用すると良いでしょう。
最後に、セルフメディケーション税制は今年だけで終わる制度ではありません。
次回2019年の確定申告に向け、2018年に購入した品物の明細書や領収書はしっかりと保管しておきましょうね。